5000万円物語

【第7話】地獄のような労働

第7話:地獄のような労働

僕は自動車整備の専門学校を卒業後、
某自動車ディーラーへ就職しました。

会社から支給された新品の作業着に身を包み、
胸をときめかせながら初出勤した僕を出迎えたのは、
100台以上の汚れた車の洗車でした。

僕は車が好きだったので、
よく週末には自分の車を洗車していました。

しかし100台以上の車を洗車することが、
これほど憂鬱なことだとは僕はまだ知りませんでした。

僕に最初に下された命令は、
2日で100台を手洗い洗車です。

ひたすら車を洗車場に移動させ、
カースポンジを使って車の汚れを落とす仕事でしたが、
その過酷さは工事現場の土方にも劣りませんでした。

長年車のボンネットについた鳥のフンは
スポンジではなかなか落ちません。

鳥のフンが取れていないと上司に恫喝されるので、
人差し指の爪でカリカリと鳥のフンを剥ぎ取りました。

僕が洗車が遅いことを見越して、
先輩はどんどん洗車場に車を持ってきて渋滞を作っていきます。

初めて大量の車を洗車するのでスピードに追いつかず、
僕が持てる限りの力と汗を振り絞って車を洗車しても、
車の数はまだまだ減りません。

洗車のスピードを上げろと怒鳴られましたが、
どうにもなるものではありません。

まだ季節は春だと言うのに、
全身汗まみれでこまめに水分補給をしないと、
すぐに脱水症状になります。

しかし水分補給なんてしていると
仕事を放棄しているとみなされるので、
僕は車の影に隠れてホースから出る水をがぶ飲みしていました。

これまで学生時代に働いてきたスーパーなどのような環境で、
しっかりぬるま湯に使っていた僕は、
社会人となるとこれまでと全く異なる、
地獄のような労働との境遇に絶望しました。

スーパーのバックヤードで
サボってモンスターハンターをしていれば、
お金がもらえるはずだったんだけどな・・・

労働とはそう言うものだったと思ったのだが・・・

高校生の時のスーパーのアルバイトでは、
勤務中に堂々とゲームや漫画に没頭して、
従業員が笑いながら不正をこなして、
お客さんが店内にいないと自宅にシャワーを浴びに帰って、
店内の商品のジャンプを店員が立ち読みして、
お客さんがいないと閉店時間を早めたり、
不良たちが万引きしないかチェックをしたり、

あの楽しかった労働ではありませんでした。

僕の車の洗車のスピードがあまりに遅く、
1年先に入社した先輩も僕の洗車を手伝ってくれました。

僕とその先輩は全身汗まみれになりながら、
厳しい表情でまるでビデオの早送りのように
同じ行動を繰り返していました。

1年先の先輩だけは優しく、
僕に「ジュースでも飲みな」と120円くれました。

僕はこっそり職場の近くの自動販売機で
アクエリアスを買い一気飲みしました。

でも僕がアクエリアスを一気飲みしている時間も、
先輩は手を止めず洗車をしていました。

これが僕の1年後の姿か…

そう思うとさらに絶望しました。

カーディーラーのため、
日中はお客さんが修理で来店します。

修理が終わった車を僕は全力で洗い上げますが、
それでもスピードが遅いらしく罵声と怒号をよく浴びました。

そして毎日の労働時間は、17時間を超えました。

休憩はお店が閉店した18時半に20分だけです。

閉店20分後からは残業が始まるので、
それまでに先輩のお弁当やジュースを買いに行ったりして、
その隙間時間でおにぎりを口に頬張り5秒で食べます。

何度も喉に詰まって死にそうになりました。

そして残業が始まると、
ひたすら汗だくになって
深夜2時まで狂ったように車を洗いました。

僕はアルバイトは何度も経験がありましたが、
きちんと正社員として雇用されたのは初めてでした。

これが本当の労働なのか?

僕は車を洗車するために生まれたのか?

ボンネットにこびりついた鳥のフンを
爪で取るために生きているのか?

こんな労働は人間が本当にやるべきなのか?

これは都合の良いように使われているだけではないか?

先輩たちは何も感じないのか?

これが定年までの40年間続くのか?

しかし早朝から出勤して車を2台くらい洗車すると、
疲労で朦朧としてきて徐々に何も考えなくなりました。

時間の感覚も麻痺しました。

朝からぶっ通しで働き、
夕方の18時の休憩だけを待ち侘びるようになりました。

カースポンジでひたすら車を洗車するだけが
僕の世界のすべてとなりました。

毎日洗車が17時間を超える頃には、
僕の思考は完全停止しました。

ただ無表情に車を洗車場に移動させ、
真っ黒に汚れたバケツからボロボロのスポンジを取り出し、
車を洗い続ける機械となりました。

やっと洗車場に車がはけて、
一時的に休息が取れるときもありました。

遠くから上司は僕の行動を隈なくチェックをして、
少しでも手が空いていることを確認すると、
あらゆる雑務を僕に押し付けました。

「このドラム缶に入った汚れた車のエンジンオイルをゴミ捨て場に捨てておいてくれ」

「1000枚ほどある書類をすべてシュレッダーにかけてくれ」

「職場の洗剤が切れているから10分で買ってきてくれ」

「お客のクレームに謝ってきてくれ」

「店長の車を洗って機嫌を取っておけ」

「トイレが汚いからピカピカにしておけ」

自動車業界の経験の浅い僕は、
すべての仕事を処理し切れずパンクしました。

社内を右に左に走り回る僕の姿を見て、
よく上司は笑っていました。

仕事は誰が見ても僕の手に余りましたが、
本当にスピードを求められる時は
10つ上の先輩も手伝ってくれました。

「すみません!本当に助かります!」

と話すと、

「お前はトロいから引っ込んでおけ」

と突き飛ばされた時は、
この会社に僕には誰も味方はいないんだなと思いました。

僕の入社した会社の新人の半分は、
最初の洗車地獄で辞めると聞きました。

そして新入社員も毎年入るわけでもありません。

次の新入社員が入社するまでは、
僕がこの地獄から抜け出すことはないと上司から教えてもらいました。

僕は次不定期で新入社員が入社するまで、

毎日全身汗まみれで車を洗い続け、
強い洗剤で手はボロボロに荒れてひび割れ、
遅い遅いと上司から恫喝され、
先輩たちの弁当をスーパーで買いに走ったり、
帰宅時間が毎日午前3時になったり、

これがあと定年まで40年以上延々と続くと思うと、
死にたくなりました。

僕はノイローゼになりました。

早朝に仕事から帰ってきて、
布団に入って目を瞑ると、

あと数時間後に一生懸命車を洗車している映像が
まぶだの裏を流れました。

寝付けない日々が続きました。

休日が終わる瞬間はいつも胸が苦しくなりました。

日々朝を迎えるのが憂鬱になりました。

ある日、ついに会社に出勤するのを辞めました。

時間になっても布団から抜け出せず、
ぼんやりと目を開けたまま、
壁に掛けてあった時計を眺めていました。

出勤時間を過ぎているので、
僕の携帯電話に職場からの電話が鳴り止みませんでした。

昼前に勇気を振り絞って店長からの電話に出て、
案の定激怒され出勤をしました。

職場に向かう途中で
セブンイレブンで便箋と封筒とボールペンを買い、
「退職届」を車のなかで書きました。

なかなか受理されず、
やっと2ヶ月後に店長に受理され、
僕はその職場を後にしました。

第8話へ続く。

【第8話】労働に恐怖を覚えた ・第1話:はじめに ・第2話:僕の人生からサラリーマンという選択が消えた ・第3話:月収500万円の憂鬱 ・第...

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